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Vol.1630 もうすぐ生誕100年ヴェラ=エレン〜最高の女性ダンシング・スター(後)
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ハリウッド最高の女性ダンシング・スターのヴェラ=エレンのついに最終回です。
『ザ・ベル・オブ・ニューヨーク』(1952)
MGMミュージカルの中でも不人気な作品です。なんせフレッド・アステア自身が認めていないのですから!確かに1910年代という時代設定の古めかしさと主人公が救世軍の女性を口説くあたりが名作ミュージカル『野郎どもと女たち』と被ってしまった不運はありますが、ヴェラにとってはキャリアがアップし続けるに相応しい作品だったとしか思えません。
アステア&ヴェラのデュエット・ナンバーは、まず救世軍の広い部屋での“ベイビー・ドール”。アステアにモーションをかけられたヴェラの心の揺れをダンスで表現。
次が馬に引かれたストリート・カーでの“ウップス”。車両の椅子をあちらこちら座ったり、つり革に捕まりながらポーズをつけたりの軽い振りまでもがお二人にかかると粋なんですねぇ。
最後が絵の中での3つのナンバー、一つめはバドミントンをしたりブランコに乗ったり、二つ目はアイススケートを器用に滑り、三つめはアステア久々のワルツで、STOP TIMEでのタップのリズムが心地好い。
ヴェラが悪女に変身する“ノーティ・バット・ナイス”もテクニックにはしらずキュートさで雰囲気を出すのは流石です。この作品のミュージカル・ナンバーでのカメラワークや音楽のアレンジは本当に素晴らしくてミュージカル映画の醍醐味が味わえます。アステアとヴェラが空さえ飛ばなければもう少し良い批評になったのかも知れませんね。
『コール・ミー・マダム』(1953)
アーヴィング・バーリン音楽、エセル・マーマン主演のブロードウェイ・ミュージカルの映画版。エセル・マーマンとドラマの俳優ジョージ・サンダースが主演、ダンサーのドナルド・オコンナーとヴェラが助演。この7月にジュネス企画からDVDが発売されるのでワクワクしてます、というのも以前日本語字幕無しのビデオを観た時は話が込み入っていて楽しめなかったからです。ヴェラとドナルド・オコンナーのデュエット・ナンバーは2つ。
“イッツ・ア・ラブリー・デイ・トゥデイ”は最初二人が歌います。私は25年も前にサントラ盤レコードを買った時にこの曲が凄く気に入り、控えていた舞台用にタップで振付をしたのです。この時踊ったのが長身の向井雅之さんと淺野康子さんでしたが二人共もう覚えていないだろうなぁ?
さて、同じ曲をドナルドとヴェラがパーティ会場の広い庭で踊るのですが、確かにハイ・テクニックでスピードがあるのですが、残念ながら競技ダンスで競っているみたいでムードが無くてミュージカル映画の楽しさを感じる事が出来ないのです。ヴェラの才能ゆえ見事にこなせてますが味気無いのが残念。
逆に“サムシング・トゥ・ダンス・アバウト”はフォックス・トロット、ワルツ、チャールストン、タンゴなど様々なダンス・ステップを歌いながら見せてくれるスマートなナンバー。タップのリズムも活きてます。
『ホワイト・クリスマス』(1954)
都会派のパラマウント映画。ビング・クロスビー、ダニー・ケイ、ローズマリー・クルーニー(ジョージの父親のお姉さん)、そしてヴェラの4人でガッツリ組んだミュージカル映画の名作。私が初めて買ったミュージカル映画のサントラ盤レコードの第1号になります。ところがサントラ盤には、ローズマリー・クルーニーとヴェラ=エレンは参加していません。ローズマリーは契約上の問題の為ペギー・リーが代役で、ヴェラは音痴なのでしょうか?トゥールディ・スティーブンスが代役で歌ってます。という訳で実は準サントラ盤なのでした。また、この『ホワイト・クリスマス』は私が子供の頃は年末になると必ずテレビ放映されてました。
さて、ヴェラはローズマリーと姉妹役そしてダニー・ケイの恋人役で全編大活躍します。まず姉妹で大きな羽根を持って歌い踊る“シスターズ”はシンプルながら心地好い。そしてヴェラとダニー・ケイの“ザ・ベスト・シングス・ハプン・ホワイル・ユア・ダンシング”では、振付のロバート・オルトンが最高の仕事をしています。ダンサーではないダニーを上手くリードさせて、ヴェラと良いムードを作っています。勢いだけのドナルド・オコンナーに見習って欲しいのが実はこのムードなんですね!もう遅いですが。
他にもダンスは沢山あるのですが、残念ながら肝心のタップ・ダンスになるとエド・サリヴァンに似た知らないダンサーが出てきてヴェラと踊るのでガッカリです。また、この頃になるとヴェラはさらに痩せていてショー・ナンバーでは、露出度の高い脚が細すぎて見るに耐えません。
ヴェラ=エレンは1981年の秋に亡くなりました。私は新聞で訃報を知りました。ずいぶん若いのになぁ、と感じたのを覚えてます。
さて、長くなりましたがここまでです。
ヴェラ=エレンのダンス映像はYouTubeでかなりの物が観れますので興味のある方は是非ご覧になって下さいね。
おわり。
天野 俊哉
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