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Vol.1628 もうすぐ生誕100年ヴェラ=エレン〜最高の女性ダンシング・スター(前)
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今回ご紹介しますヴェラ=エレンは、クラシック・バレエ、モダン・バレエ、ラテン・ダンス、ソシアル・ダンス、アクロバット・ダンスそしてタップ・ダンスまでが超一流のハリウッド、いやアメリカを代表するダンシング・スターであります。唯一歌だけは苦手なのか必ず誰かが吹替えているので多分音痴なのでしょうね。
ニューヨークの有名ナイトクラブからブロードウェイに進出し『バイ・ジュピター』や『コネティカット・ヤンキー』に出演。舞台を見に来たハリウッドのプロデューサー、サミュエル・ゴールドウィンにスカウトされ、ダニー・ケイ主演の『天国と地獄』(1945)で映画デビューしました。オープニングの民族舞踊風のダニー・ケイとのショー・ナンバーは普通の出来ながら、赤いシャツに白のミニ・スカート、タップスの付いた赤いトー・シューズ姿で登場するモダンなショー・ナンバーが素晴らしい!名無しの男性ダンサーが相手役なのを別にすればヴェラのテクニック全開です。健康的でエネルギッシュな動きはそれまでのダンサーを一気に過去の物にしてしまったようです。
ゴールドウィンの製作するダニー・ケイ主演の『ダニーケイの牛乳屋』(1946)にも続けて出演、駅のプラットホームのセットで男性ダンサーを従えて踊るショー・ナンバーがまたまた見事でした。
このあとゴールドウィンとギャラの事で揉めて契約を解除されてしまいました。
同じ時期にダリル・F・ザナック率いる20世紀FOXで『スリー・リトル・ガールズ・イン・ブルー』(1946)に同社の誇るミュージカル女優のジューン・ヘイヴァー、ヴィヴィアン・ブレーンと同格で主演を。しかも名曲“ユー・メイク・ミー・フィール・ソー・ヤング”のナンバーを担当する特典が付きました。遊び心一杯の衣裳やセットが楽しいプロダクション・ナンバーで、健康的にコロコロしたヴェラの踊りを堪能出来ます。
FOXではもう1つ『カーニヴァル・イン・コスタ・リカ』(1946)に歌手のディック・ヘイムズと主演しました。かつて松本晋一さんからビデオを貸して頂いたのですが、ミュージカル・ナンバーにあまり魅力を感じなかったのでそれ以降観ておりません。
さて、ハリウッドの大物であるゴールドウィンに睨まれ、ハリウッド中の映画会社から干されて10ヶ月もの間仕事の無かったヴェラに電話をかけてきたのがミュージカル映画の大御所ジーン・ケリーでした。MGMがジュディ・ガーランド、ジューン・アリスン、リナ・ホーン、ミッキー・ルーニー、ペリー・コモらミュージカル映画の大スターを並べたリチャード・ロジャース&ロレンツ・ハートの伝記映画『ワーズ&ミュージック』(1948)のプロダクション・ナンバー“10番街の殺人”でモダン・バレエを踊るジーン・ケリーが、自分の相手役にヴェラを選んだのです。それまで無名の男性ダンサーばかりで相手役に恵まれなかったヴェラにとっては凄いラッキーなお誘いでした。ベレー帽に体にピッタリの黄色いウェア、スリットの入ったセクシーなスカート、しかも網タイツ姿でジーン・ケリーら男性ダンサーを悩殺。最後は撃たれてキャバレーの階段で死に絶える悲劇的なラストもドラマティックでした。ヴェラ自身もかなりダイエットしたらしく、見違えるくらいスリムになり年齢も少し上に見えたほどです。
これを機にMGM映画会社と契約して、ハリウッドでの第二の人生が始まりました。ヴェラは、ジーン・ケリーがスタンリー・ドネンと監督に乗り出したブロードウェイ・ミュージカル『オン・ザ・タウン』の映画版『踊る大紐育』(1949)にもキャスティングされました。舞台ではソノ・オーサトが演じたミス地下鉄ことアイヴィ・スミス役です。水兵役のジーン・ケリーが地下鉄の中に貼られたヴェラのポスターを見て空想する“ミス地下鉄”のナンバー。ここは若いスタンリー・ドネンの演出場面といわれてますが、ゴールドウィン時代とは違い、テクニックにとらわれず抑えた中に彼女らしさが出たキュートなダンス。ダンス・スタジオでジーン・ケリーと故郷を懐かしんで歌い踊る“メイン・ストリート”はシンプルなタップ・ダンスだけども甘さがあって素敵な雰囲気です。プロダクション・ナンバー“ア・デイ・イン・ニューヨーク”はモダン・バレエの振付でジーン・ケリーと踊りまくりますが、映画のメインキャストのジーンとヴェラ以外の4人が代役のダンサーゆえ何となく興醒めしてしまうのは私だけでしょうか?
映画は大ヒットしてMGM映画の新しいスターのひとりになりました。
つづく。
天野 俊哉
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