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Vol.1626 もうすぐ生誕100年ベティ・ハットン
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1940年代のパラマウント映画のトップ女優だったベティ・ハットンの登場です。
数々の作品において、歌も踊りも体当りの演技も素晴らしい結果を残してきたのに、何故か好意的な評価を受けられないのがベティの宿命でもあります。ベティは1950年のミュージカル映画『レッツ・ダンス』でダンスの神様フレッド・アステアと共演しているのですが、私の知るアステア・ファンの阿部久志さん、松本晋一さん、白川希さんのベティに対する評価はすこぶる辛口なのです。そんな私も普段は決してベティ寄りでは無いのですが、今回はお祝いコラムなので一生に一度仲間を裏切ってベティを援護してみようと思います。悪しからず。
ベティ・ハットンと第二次世界大戦中のハリウッドを切り離す事は出来ません。それまでのお上品なミュージカル女優とは真逆のバイタリティ溢れるアクの強すぎる個性で兵隊さんや観客をグイグイ引き付けました。彼女がソロで歌うとヘアスタイルが乱れまくり、顔はくしゃくしゃに、奇声をあげ、酷いときはずぶ濡れになったり、（あの保守的な時代に）太股露にフロアにぶっ倒れたりします。何故かは知りませんが、初期のミュージカル『星条旗のリズム』『ザ・フリーツ・イン』ではそんな場面が記憶に残りました。やがて、パラマウント映画の大スターのビング・クロスビーと『ヒア・カム・ザ・ウエーブス』で、ボブ・ホープと『レッツ・フェイス・イット』で共演する様に。また、天才監督と呼ばれたプレストン・スタージェスの『モーガン・クリークの奇蹟』にもキャスティングされ、1945年には早くもパラマウント映画を代表する存在になりました。
私はビングやボブの作品でヒロインの立場で活躍する程度の抑えたベティが良いと思っていたので、1945年から1952年に至るパラマウント映画での単独主演作品にはあまり興味がありません、よってアメリカの映画マニアがDVDのリスト・アップをしていてもリクエストすらしないのです。
さて、ベティの偉いところはCGの無い時代にアクロバットや危ない場面にスタントを立てず挑戦した事です。サイレント映画時代にアクション活劇の大スターだったパール・ホワイトの伝記映画『ポーリンの冒険』（1947）、セシル・B・デミル監督の超大作『地上最大のショウ』（1952）では綱渡り等ロープを使って体を張ったベティの熱演に感動しました。ミュージカル映画でも病気のジュディ・ガーランドの代役としてMGMで主演した『アニーよ銃をとれ』（1950）も、ジュディとは真逆の体当りキャラで人気を得ました。現在ではMGMを代表する傑作ミュージカル映画のひとつに数えられています。
そしてフレッド・アステアと共演した『レッツ・ダンス』ですね。日本では劇場公開されていないのと、いまだに日本語字幕入りのビデオもDVDも発売されていない不運な作品なのです。
詰まらないお話が2時間も続くので仲間たちは先ずそこが許せない訳ですね。このコラムを書くためにミュージカル・ナンバーだけをセレクトしたビデオを探してきてチェックしてみました。20年ぶりくらいです。結論から言うとアステアさん何だか乗ってるんですね、この作品に。
それもそのはず、振付にはアステアの盟友ハーメス・パンが雇われているし、ピアノと椅子を使ったソロ・ナンバーが素晴らしい！
そして、ベティはオープニングのジルバでパンプスを履いてるんですよ。もち、アステアへの気遣いです。
『踊る結婚式』以来のジルバに当時50歳のアステアのりのりで、ベティにひけをとらないばかりか、結構良いコンビネーションを見せていると思いました。
そして西部劇の酒場での西部野郎二人のデュエット・ダンス。かなり長いナンバーなのに中だるみせずに楽しませてくれました。相性悪くないかも？
相手がアステアでなかったらベティは自分のスタイルをもっと、もっと、もっと前面に押し出していたと思いますので、ここでは大人しく従ったのでしょうね。
今度、白川希さんお手製の完全版DVDを貸してもらわなくては！
私が映画ファンになって毎月発売される映画雑誌を買い始めた頃こんなニュースが掲載されてました。
《往年の大スター、ベティ・ハットンが田舎のドライブ・インで皿洗い》
家の両親も知ってましたのでかなり話題になったのでしょうね。プライベートでは大変苦労したようですがあえて触れません。
今回はバイタリティ溢れるハリウッドのミュージカル女優ベティ・ハットンを取り上げました。
天野 俊哉
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