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OUR MASTER : 佐々木 隆子
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Vol.158 幻のミュージカル映画が渋谷に出現!!
 放送されてから40年も経つのに、今でも人気の高いアメリカのTVシリーズ「刑事コロンボ」。その中に「忘れられたスター」という、女優ジャネット・リーがゲスト出演するエピソードがありました。ジャネットは1950年代に人気のあった映画スターという役で、コロンボとのやりとりも楽しいものでした。推理ものなので、ストーリー展開の魅力をここに書けないのが残念です。
 さて、ドラマ中、この往年のスターが自宅で毎晩自分の若き日の映画を観るシーンがあり、そこで上映されるのが「Walking My Baby Back Home」(1953)というミュージカル。若きジャネットと「雨に唄えば」のドナルド・オコンナーが主演。「コロンボ」の中で「Walking〜」のミュージカル・シーンがいくつも出てきて興味を持ったものの、レコード(そしてCD)にもビデオ(そしてDVD)にもならなくて、ミュージカル・ファンの間では幻の作品となっていました。
 そんな「Walking〜」が突如、渋谷の映画館で上映されることとなり、飛んで行きました。16mmフィルムで字幕も入っていない今どき珍しい上映会でしたが、入場料が500円と良心的でした。
 戦前「四十二番街」を作ったロイド・ベーコン監督の演出は、エンジンが掛かりそうで掛からないじれったさがあるものの、中盤からテンポが良くなったような気がしましたし、ミュージカル・ナンバーへの流れがうまいと思いました。使われている音楽の多くがディキシーランド・ジャズで、「キャンプタウン・レース」「サウス・ランパート・ストリート・パレード」「ハニーサックル・ローズ」(スローバックの曲)など、Y'sの生徒さんにはなじみのあるものばかり。振付は、タップ界のベテラン、ルイ・ダパロンで、その豊富なアイデアで、タップからクラシカルなダンスまで、ダンスナンバーを華やかに創りあげています。
 ドナルド・オコンナーのソロ2曲がわりとあっさりしていて(他の作品に比べれば)楽しめたこと、4〜5曲もあるドナルドとジャネットのデュエットがとてもスマートに、ロマンティックに仕上がっていてびっくりしました。バディ・ハケットという、テレビでとても人気のあったコメディアン、そして美しいハーモニーを聞かせてくれる女性1人と男性4人のコーラスグループ、モダネアーズが作品をサポートしています。MGMミュージカルのような飛びぬけた作品ではありませんが、古き良き時代のムードに浸れて、見終わった後「面白い映画だったね」と、ホッとできるミュージカルでした。
 この作品は「恋人を家に送って歩く道」のタイトルで、シネマヴェーラ渋谷にて、今度は日本語字幕入りで上映されるそうです。日程は決まり次第このコーナーでお知らせしますね。

<ジャネット・リー>
 歌って踊れるスターでありながら、先に紹介した「Walking〜」など、ミュージカル映画の出演はごくわずかです。日本未公開ながら日本でDVD発売されている「マイ・シスター・アイリーン」で、ジャネットは何とボブ・フォッシーと共演していて、とても難しいタップをデュエットしています。
 彼女は1950年代にあらゆるジャンルの映画に出演し、私もその多くをテレビで観ましたが、ハリウッドの典型的な美人女優として終わるはずでした。ところが、彼女のキャリアは最盛期を過ぎたあたりから輝いてきます。そう、数多くの研究書が出版されるほど有名な作品に3本も出演したからです。
 オーソン・ウエルズ監督の「黒い罠」(1959)、アルフレッド・ヒッチコック監督の「サイコ」(1961)、ジョン・フランケンハイマー監督の「影なき狙撃者」(1963)がそれです。「刑事コロンボ」シリーズのゲスト・スターの多くが男性で女性はとても少なかったのですが、ジャネットには「ヒッチコック・スリラーのヒロイン」というゲスト出演にふさわしいキャリアがあったのですね。
 ジャネットは「サイコ・シャワー」(ちくま書房)という著書で、映画「サイコ」での撮影秘話に加えて、自分のキャリアも語っているので興味のある方は読んでみてください。

天野 俊哉






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