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Vol.1569 宝塚歌劇「ファントム」を観てきました〜エリックの初デート場面に納得〜
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1月27日(日)、東京宝塚劇場で雪組の「ファントム」を観てきました。歌に定評のある望海風斗さんと真彩希帆さんのコンビなので、何が何でも観たいと思っていましたが、なかなかチケットが入手できず、諦めかけていた時にやっと知り合いの方から譲っていただきました。今回の再演は4度目ですが、これまでとはかなり演出を変えたと聞いていましたので、それも観たかった理由の一つです。
まずオープニング、これまではファントムがオペラ座の屋根の上と思われる場所で月をバックに歌う場面から始まりましたが、今回はその前に映像が挿入されました。パリの華やかな街並みそして夜景、それが一変してオペラ座の地下へと私たち観る者をいざなっていく仕掛けです。幕が上がりいよいよファントム登場。今回は屋根の上でなく階段の上で、闇に生きる哀しみを歌います。その姿は皆に恐れられる怪人というより、所在無げな1人の青年という感じです。
過去3回のファントムはいずれも素晴らしかったのですが、実は何となく違和感のある場面が1か所ありました。それは、怪人=エリックがクリスティーヌを自分の住んでいる地下のすみかに案内して、自分の好きな詩について打ち明けたりする、いわば「初デート」の場面です。それが今回は、いつものムズムズする感じがなく、すとんと腑に落ちました。なぜなのか色々と考えてみたのですが、恐らくこういうことかと思い当たりました。
これまでのファントムは、オペラ座の人々やクリスティーヌに対して圧倒的な力を持つ、ありていに言うと「偉そうな人」の印象がありました。それが初デートの場面で急に少年のようにナイーブな心の内を吐露するので、その落差についていけなかったのだと思います。衣裳もそれまでの場面で着ている重々しいものと違い、白のドレスシャツに赤のベストスーツ、トップさんにしては短めのブーツで(自宅でくつろぐ時の服、という想定なのでしょうか)、これもなんだかしっくりこない感じでした。
今回の望海さんのファントムは、先に述べたオープニングから、怪人としてではなくエリックという感じやすい青年を前面に打ち出しているので、「初デート」の場面が来てもそれほど違和感がないのかな、というのが分析した結果です。ただ、正直言うと今回も含めこの場面はいつも心の中でクスッと笑っているのですけれど。初デートで自分の好きな詩について話すなんて、女の子としては最も引いちゃう、失敗あるあるじゃないの?と思ってしまうものですから。まあ、それはさておき。
これまで望海さんの舞台を何回か観てきて、彼女のすごさには「説得力」という言葉がぴったり来るように思いました。ロベスピエールしかり、ドン・ジュアンしかり、マイナスのイメージの強い人を彼女なりに咀嚼して、観る側に感情移入させる説得力が、彼女の芝居にはあると思うのです。一般的に宝塚で取り上げる物語は、魅力的な男の人が出てきて、女性ファンは多分、自分をその相手役に置き換えてうっとりする、というパターンが多いと思いますが、望海さんの場合は、彼女が演じる人物そのものに観る者を同化させる力があるように思いました。
今日のお芝居も、観客の中には泣いていらっしゃる方もいましたが、私は観終わった後、エリックが可哀そう、というのではなく、あたかもエリックの人生を私自身が生きたかのように、すがすがしい気持ちでした。「たとえ一瞬でもクリスティーヌに愛されたんだから僕の人生にも価値があったんだよな」というセリフ、そして、死ぬ間際にクリスティーヌが傷のある自分の顔に接吻してくれてニッコリ笑う、そういった場面が私の中に溶け込んでいく感触がありました。
ちなみに私が行った日の公演は農協観光様の貸し切りで、初めて宝塚を観るのかな、という方もいらっしゃったようでしたが、舞台から受ける感動はみんな同じ、いや宝塚への先入観が無い分、私たちファンより純粋で感動が大きかったかもしれません。ファンが増えるのは嬉しい事ですが、ますますチケットが取りにくくなってしまうことが心配、というのが正直なところです。
(M.S)
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