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Vol.155 気になるDVD:伝記ミュージカルの秀作「土曜は貴方に」
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1940年代から50年代にかけて音楽家の伝記映画が山ほど作られましたが、その多くが大金をかけたショー・アップしたものでした。今回ご紹介する「土曜は貴方に」(1950)は、大掛かりな演出を控え、主人公達のエピソードを丁寧に描き、彼らの作った音楽を聞かせることに専念しています。ミュージカルと言えば大作志向だったMGMがこの作品のような制作を続けていれば、もう少し長くスタジオ経営を存続できたに違いありません。
マリリン・モンローの歌で有名な“I Wanna Be Loved By You”を作ったバート・カルマーとハリー・ルビーの作詞作曲チームを、踊りのフレッド・アステアとコメディアンのレッド・スケルトンが演じています。カルマー&ルビーの曲は、コール・ポーターやジョージ・ガーシュインの作る曲と違って軽いタッチのものが多いので、心地よく聴くことができます。
今回アステアと踊るのは、「踊る大紐育」「ホワイト・クリスマス」のヴェラ・エレンです。オープニングのステッキを使ったタップダンスで、アステアと完璧なコンビネーションをみせます。“Mr. & Mrs. Hoofer At Home”は珍しくタップのみのナンバーで、面白いアイデアがたくさん。アステアとたくさんの名ナンバーを残してきたハーメス・パンが振付なので魅力があり、歌ったあとさりげなくステップを踏む“Nevertheless”も、アステアが誰もいないステージでひとりステップの稽古をするシーンなども、ドラマと自然とつながっていてずっと記憶に残ります。
私は10代で初めてこの作品を観てアステアのほかのミュージカル「イースター・パレード」や「バンド・ワゴン」よりもずっと気に入ったものです。アステア自身も、自伝の中で「私の最も好きな作品」に挙げています。
邦題の「土曜は貴方に」は、セリフにも歌にも全く登場しない言葉なので、昔から気になっています。“September Affair”が「旅愁」になったり、“Waterloo Bridge”が「哀愁」になった時代の題名なので、深く考える必要はないのかも知れませんが・・・
天野 俊哉
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