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Vol.1549 2018読書感想文
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小学生の頃から読書感想の宿題が大の苦手でした。このコラムに書評の類いが少ないのはそのせいであります。たまに書評というか読書の感想文があったとしたら、ただ一気に読んで一気に書いた!勢いだけであります。山のように積んである本を見ながら、思えば随分楽しい本が多かったのにコラムが少ないなぁ、という事からこの1年に読んできたエンタ本をピックアップしてみたいと思います。
《岸香織さんの本》
のっけからそれは誰ですか?と言いたげな皆さまのお顔が目に浮かびます。
1959年から40年間宝塚歌劇団の名脇役として活躍された方です。岸香織さんは舞台人であると同時に宝塚歌劇団発行の月刊『歌劇』に「聞いて頂戴こんな話」という最高に楽しいエッセイを執筆されて読者から絶大な支持を受けていました。
今年100周年を迎えた月刊『歌劇』に卒業生の投稿特集というのがあり、元トップスターの安奈淳さんも文章を寄せていました。さて、たまげたのは次の言葉「故岸香織さんから頼まれて書いたエッセイの題字云々」を読んだ時でした。
えっ、故岸香織さん?
私は安奈淳さんが間違えて故人にしてまったのかと顔面蒼白に!でも間違えるはずもないか、宝塚ファン数名にメールを送るとなぜか皆さん岸さんの逝去をご存知で、その時期サンフランシスコに在住だった松本晋一さんからは「天野さんが知らなかった事のが驚きデスネ」と。色々調べてみるともう亡くなって6年にもなるのです。現役時代から年齢には触れないタカラジェンヌゆえ、亡くなった時もヒッソリだったのかも知れませんが、もう自分が浦島太郎になった気分でした。
早速岸香織さんのエッセイをまとめて1999年に発行された『聞いて頂戴こんな話』を本棚から出してきて読みました。やはり現役時代のリアルなルポが面白くて笑える。もう一冊、宝塚を卒業してすぐの2002年発行の『妖精たちの舞台ウラ』になると残念ながら外部の人間による覗き見みたいな遠慮もあるし、何と言っても(その当時の)現役タカラジェンヌとの年齢差や感覚のズレを感じてしまいました。鋭い人だからそれ以降はご自分から執筆を辞退したのかも知れませんね。
《田宮二郎さんの本》
『田宮二郎の真相』は週刊誌の『アサヒ芸能』に連載されたドキュメントを単行本化したもの。これを書いた石田伸也氏は私と同世代のルポライターです。
田宮二郎さんは、私の子供時代1960年代に映画で活躍した二枚目スター。やがてテレビドラマやクイズ番組の司会を経て、近年再ドラマ化された名作『白い巨塔』の主人公を演じたのち、40年前の1978年12月28日に自宅で猟銃自殺をしてしまいました。これは凄くショッキングな事件でしたね。40年もの間、何故誰も手をつけなかったのか?不思議でしたが未亡人となられた奥様が封印してしまったからだそうです。
ただこの単行本、週刊誌連載という宿命からか度々クライマックスである猟銃自殺が登場するのがやや分かりづらかった。出来ればベテランのルポライター大下栄治さんスタイルで、順を追った構成のが良かった。
さらには田宮二郎さんの後に『白い巨塔』で田宮さんと共演し、1992年に事故死された女優の太地喜和子さんのルポが続くのも?疑問が残りました。確かに太地さんのその後の人生も関連性はありますが、全く別物では、としか思えない。
表紙の田宮さんが類いまれにみるイケメンのせいか、あちらこちらの書店で手に取り立ち読みしている女性が多いのに驚きます。
《吉永小百合さんの本》
少し前に書かれた女優吉永小百合さんの文庫本『夢の続き』です。駅に貼られた旅のポスター通り、清く美しい方なのですが、何となく敷居が高くて吉永さん主演映画やドラマはパスしてまいりました。少しでも吉永さんを知りたくて購入しましたが、体形維持と健康の為に水泳を欠かさないとかストイックな方だと分かったり収穫の多い本でした。日活映画会社に入社してから比較的今日までのエピソードを綴ったエッセイですが、後半映画監督の山田洋次さん、先日亡くなられた樹木希林さんとの対談が文章化されておりこれが面白かった!
普通に映画の話題で対談が進んでいる中、樹木さんが吉永さんに「ところで、どの辺を整形しているんですか?」と聞くので「えっ、わたし整形したことありませんけど」と慌てて答える一幕も。私はつい最近までこうしたインタビュー、対談形式の本を避けてきたのですが、こんな本音トークを掲載してしまう事に驚いて感心してしまいました。と言ってもこれは樹木希林さんだから許されるものですからね。そう言えば年末の『徹子の部屋』追悼特集で生前1988年頃の樹木希林さんの映像が流れたのですが、登場するや「私ね、この番組嫌で嫌で仕方なかったんですよ!だってこの番組出ると私が死んだときにこの映像が流れますでしょ?」と亡くなる30年も前に指摘するものだから爆笑してしまいました。また、胸の深く開いた衣裳を着た黒柳さんの胸元を覗き込み「あらっ、黒柳さんの乳首見ちゃいましたよ」なんて大胆な発言にあの黒柳さんの方が慌ててしまったり。コワッ。
私は常々樹木希林さんみたいな生徒や知り合いが居なくて良かった!と思っていた人間なので、あまりに凄すぎて感心してしまいましたよ。
《インタビュー日本のスター》
さて、樹木希林さんには退場して頂いて、往年の日本映画の大スター10名に映画評論家の水野晴郎さんがインタビューする1980年代に出版された本です。
加山雄三さんのお父さんで松竹映画の二枚目スターだった上原謙さん、『姿三四郎』や戦争映画の藤田進さん、『暖流』などの松竹映画でハイソなお嬢様を演じた高峰三枝子さん、名作『二十四の瞳』の高峰秀子さんら私の大好きなスターさんばかりです。
往年の、と言っても両高峰さんはまだ当時60代なのでまだまだお若い。インタビュー本の成功不成功を左右するのがインタビュアーの力量ですが、映画の隅から隅までをご存じの水野さんなので見事な展開であります。また信じられないのがスターさん達の記憶力であります。1年に10本以上も映画の主演もしくは出演をしてきた方達が水野さんのマニアックな質問に全て答えてしまうのです!
「私、そんな映画出ましたか?」とか「そんな場面ありましたか?」なんて誰も言わないのが凄すぎる。
面白すぎて何回読み返した事か。古い日本映画のスターさんを知りたい方にオススメの一冊ですね。
長くなりましたのでまた日を改めて、ですね。
天野 俊哉
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