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Vol.1540 シアターガイド突然の休刊
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11月1日の夜、電車の中で「今日から11月だなぁ」とか「明日シアターガイド買わなきゃ」みたいなくだらない事をボーッと考えていました。日々緊張感の無い生活をおくっているのですね。ところが、帰宅してすぐに《シアターガイドが休刊になるらしい》というニュースを友人からのメールで知りました。発売元の会社の倒産だそうで、翌日11月2日に発売される12月号が最後になるらしい。休刊ていうか、廃刊ですよね。
『シアターガイド』は、モーニングデスク社なる会社が発行する税込み¥500の演劇情報誌で、約180ページの分厚い本で小さな作りなので情報誌として機能的。佐々木隆子先生が亡くなった1992年が創刊だそうですので今年が26年目だったそうです。
社長から社員に会社の倒産が伝えられたのが10月30日だった、という事で最後の12月号の編集後記にはそうした話は一切無くて「新しい演劇情報よろしくお願いいたします!」という前向きな編集姿勢のみが掲載されてます。我々読者に別れの言葉を伝える事が出来なかった編集部の方々はさぞ無念だろうな、とさみしい気持ちになりました。
近年、演劇とか舞台ミュージカルを扱った書籍は多くなりましたが、殆どはジャニーズ、宝塚、劇団四季、東宝など大手の作品やスターとタイアップした様なものばかりで情報の収得にはならない。『シアターガイド』にも当然そうした傾向はありましたが、一般からの豊富な情報量は他を圧倒していました、と言ってもそれらの掲載は無料な訳ですがね。
最終号には11月に日本版キャストで上演されるミュージカル『TOP HAT』の演出家と主演コンビによる座談会が掲載されてますが、他の演劇情報誌と違うのが別のコーナーでは全く別の上演記念のコラムが掲載されており、映画でのフレッド・アステアの映画・DVDとCD情報のみならず、イギリス版舞台の振付を担当したビル・ディーマーのイギリス版上演までの珍しいエピソードにも触れています。こうした編集サイドの他誌との差別化も優れていたのです。先月号では、ミュージカル映画の名作『ウエストサイド物語』でアニタを演じ、現在もお元気のミュージカル女優でダンサーのリタ・モレノのインタビュー記事もあり嬉しかったです。共演者の「ジョージ・チャキリスとは恋人同士だったの」なんてどうでも良い話が多かったけれど。
かつては雑誌の『ぴあ』が映画と共にコンサートや演劇、美術館、イベント等幅広い情報を扱っていました。無駄かも知れない情報欄からたまたま得るナイスな情報があまりに多くて、30年以上買い続けました。
この『ぴあ』が10年前に廃刊してからは演劇に関しては『シアターガイド』頼りで、巻末のインデックスにズラーッと並んだ公演名や劇団・団体名を見ると、「これから中小の公演の情報はどこから入手すれば良いのだろうか?」と真剣に考えてしまいます。
沢山のチラシやポスターを製作する予算の無い劇団は多い。無料掲載の情報欄のよく知られていない劇団名や役者さんの名前を見ると「私たちはいつ、どこで、こんな舞台をやるんです、皆さん見にいらしてください!」という心の叫びが聴こえてくるようです。舞台人にとってはお客様に自分達を見てもらってなんぼなのですね、その唯一の架け橋としての貴重な演劇情報誌シアターガイドの休刊、いや廃刊はあまりに辛すぎます。
ただ私のこうした意見は今のネット時代には古いのかも知れません。少数派の意見としてご記憶頂ければ幸いです。
長い間ありがとうございました!
天野 俊哉
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