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Vol.1531 『ミュージカル映画特集』シネマヴェーラ渋谷その⑤ 踊る三十年代
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瀬川昌久先生セレクションによる『ミュージカル映画特集』が名画座シネマヴェーラ渋谷にて開催されています。今回は、いよいよフィナーレ11月10日（土）から11月16日（金）までのプログラムからミュージカル映画黄金時代1930年代の3作品を取り上げます。
『フットライト・パレード』
“Footlight Parade”（1939）
ジェームズ・キャグニー
ジョーン・ブロンデル
ルビー・キーラー
ディック・パウエル
『四十二番街』のヒットでワーナー映画はレヴュー映画を続々と製作する事になりました。天才監督バスビー・バークレーによるレヴュー場面の素晴らしいアイデアは留まるところを知らない勢いでした。1930年代初めのワーナー映画のミュージカルは、大勢のコーラスを使ったバークレー監督のレヴュー場面、ディック・パウエルの歌、そしてルビー・キーラーのタップ・ダンスがセットになっていました。
この『フットライト・パレード』のもうひとつの魅力は、当時ワーナーでギャング映画の大スターだったジェームズ・キャグニーの参加です。ブロードウェイの舞台で鍛えた喋りの上手さとスピードは映画のテンポ・アップにぴったり。しかもキャグニーはタップ・ダンスが大好きな人だった！舞台演出家のキャグニーがコーラス・ガールを前に軽くステップを踏んだり、猫ちゃんナンバーの振付をする場面なんかも楽しめます。巨大なプールを使ったレヴュー場面と上海の酒場を舞台にした水兵達の“上海リル”ナンバーが凄い。キャグニーとキーラーの軽妙なタップのデュエットがみられますよ。バークレー監督のレヴュー場面は例えCGを使ったとしても再現出来ませんし、ここまでの感動は遺せないと思います。オススメします。
『聖林ホテル』
“Hollywood Hotel”（1937）
ディック・パウエル
ローズマリー・レーン
ベニー・グッドマンと彼の楽団
タイトルの《聖林》をハリウッドと呼びます。この頃は当て字が多くて、今と比べると個性的なタイトルが多いですね。
映画は何度観ても、何度サントラ盤を聴いても記憶に残るのはベニー・グッドマン楽団の演奏場面だけ。
他も悪くないんですけどねぇ。あとはチラッと登場するコラムニストのルエラ・パーソンズの姿とか、アメリカ合衆国大統領になったロナルド・レーガンのアナウンサー時代の姿とか、ですかね。
さて、“Sing Sing Sing”を演奏する当時のベニーの楽団は、スイング・ジャズ界のスター・プレイヤーだらけであります。ドラムのジーン・クルーパ、ピアノのジェス・ステイシー、トランペットのハリー・ジェームズとジギー・エルマン。俳優のジョニー・スキャット・デイビスがトランペッター役なので楽団に紛れ込んで演奏の真似をさせられているのが笑えます。
ベニーの楽団には、オーケストラ演奏とは別に少人数でのカルテット（四重奏）演奏があります。ベニーのクラリネットとドラムのジーン・クルーパは同じですが、ピアノのテディ・ウィルソンとヴィブラホンのライオネル・ハンプトンの2人は黒人なので出演出来る場所も限られており、カルテットだけの少なめの参加でした。
さあ、レッツ・スイング。
『世紀の楽団』
“Alexanders Ragtime Band”（1938）
アリス・フェイ
タイロン・パワー
ドン・アメチ
ハリウッド・ミュージカル界の天才音楽家アーヴィング・バーリンが名曲を提供した大作。20世紀FOX製作のミュージカル映画の魅力はブロンド美人の存在でした。1930年代がアリス・フェイ、シャーリー・テンプルとソニア・ヘニー、1940年代がベティ・グレイブル、そして1950年代のマリリン・モンローへと繋がります。この作品では前半の売りはアリス・フェイですが、後半から出てくる凄い声の持ち主に注目！これが後にブロードウェイ・ミュージカルの女王となるエセル・マーマンなのです。主演のタイロン・パワーとドン・アメチは普段ドラマがメインの人なのにミュージカル映画に出されては器用に歌ったり踊ったりしてました。
サントラ盤CDには映画で使われなかった音楽も沢山収録されているのですが、そのうちのひとつ“Let Yourself Go”は、なんと第1回目の『2003年の東京リズム劇場』のオープニング・ナンバーで私達が歌い踊った時に使われておりました。感動。
今年で製作されてからちょうど80年目にあたるのですね。ちなみに私は40年前に1度観たきりです。
天野 俊哉
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