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OUR MASTER : 佐々木 隆子
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Vol.1518 2018年9月の宝塚花組公演
 雨の木曜日に東京宝塚劇場まで明日海りおさん率いる宝塚花組公演を観に行きました。
 現在の花組は宝塚観劇団5組の中でも一番の人気ゆえチケット入手は困難なので半ば諦めておりましたが、市川教室のタップクラスの生徒さんが大切なチケットを譲ってくださり、しかも1階席前から6列目での観劇となりました。

 公演に先立ちそのタップの生徒さんが応援されている花組の男役、瀬戸かずやさんのパーソナルブックをプレゼントして頂きました。
 沢山の写真も素敵でしたが、私には演出家藤井大介氏と瀬戸さんの対談や、瀬戸さんへの質問コーナー等の方がありがたく何度も何度も読み返してしまいました。
 下級生時代に自分だけ公演予定が無かったり、香盤表を見るのが怖かったとか、成る程と思える部分のやり取りが貴重でした。そうですね、皆さんその時点で夢を失って諦めて退団してゆくのですからね。
 花組の男役さんが昔から持っているプライドみたいなものは瀬戸かずやさんを中心に現在でも生きており、ゆえ花組のダンスは他の組よりも見応えがあるのですね。ひとつひとつの言葉が心に残りました。

 さて、宝塚劇場に戻りましょうね。まず和もののお芝居から。
ミュージカル
『MESSIAH-異聞天草四郎-』作・演出/原田諒

 私は歴史に全く興味を持たない子供でしたので、この歳になって天草四郎がどの様な人物なのかを、またその時代背景などを初めて知りました。そんなことから意外にも私は洋もの作品よりも発見の多い和もの作品のが好きなのです。
 演出の原田氏は、歴史上謎が多い天草四郎を「もと海賊」という設定にした事から宝塚らしい、明日海さんをより男っぽく格好よくみせる事に成功しました。瀬戸かずやさんら隠れキリシタン達の群衆劇の部分の力強いアンサンブルも見事でしたが、そのアンサンブルを引き連れて熱演する明日海さんも大変だなぁ〜とふと素に戻って眺めてしまう瞬間もありました。
 想定外だったのが島原の乱を起こさせた張本人とも言える島原藩主の松倉勝家を演じた鳳月杏さんでした。鳳月さんの冷酷ぶりが際立っており、あんな人物が存在したからこそ、一揆に向かわせたのだなとやたら説得力がありました。
 凄い人だ!悪役の鏡!
 2番手の柚香光さんは絵師の役だったので目立たなかったけれど、役柄を丁寧に演じてました。
 それにしても花組のお芝居の衣裳はいつも安物ですね。明日海さんだけは多少衣裳替えがありますが、最初から最後まで同じ人もいて気の毒。つまり「後半のショーに期待せよ!」との事なのでしょう!
 ここで35分間の休憩です。

ショー・スペクタキュラー
『BEAUTIFUL GARDEN-百花繚乱-』
作・演出/野口幸作
“Beautiful Garden”(羽山紀代美/振付)

 案の定素晴らしい衣裳での幕開きでした。それにしても野口氏はかなりの曲者です。松本晋一さんのオープニング・ナンバーに似ているのです!銀僑で歌っているスターの後ろの本舞台でのダンスが凄く面白いのですね。つまり、スターを見てしまうと、後ろのダンスが楽しめないのです。人間の目って二つですからね。困る!とても困る!
 ラストの白い羽根を持ったアンサンブルの娘役さん達が段々になった舞台に腰かけた絵がレヴューの香りムンムンでステキでしたし、舞台の埋め方にも唸ってしまいました。
“百花繚乱〜花美乙女”(麻咲梨乃/振付)
 お芝居では重い役だった若手男役のホープ水美舞斗さんが娘役を従えて踊るラインダンス。娘役の衣裳は引き続きオープニングの素敵な衣裳でした。
“Rainy Day Garden〜パリの花々”(Ogri/振付)
 シットキングスというグループのメンバー、Ogri氏が宝塚の振付初参加。テレビでシットキングスのダンスを見ていたので大変期待したのですが、傘を持ったロマンティックな場面、しかも曲が“雨にぬれても”では場違い?では。ただ、Ogri氏の若い才能を感じさせる動きがあちらこちらにあり、平凡な場面にはならなかくて良かったとは思いました。
“Spanish Garden〜アンダルシアの赤いバラ”(Anju/振付)
 こうした大仕掛けのナンバーも確かに必要ですが、夏場の舞台に闘牛士の衣裳と赤いケープは少し重いかなと思いました。ここでも水美舞斗さんの体の動きが見事で場面をさらってました。
“Tropical Garden〜渚の花々”(三井聡/振付)
 瀬戸かずやさんのソロから始まる中詰。三井さんは『ラ・ラ・ランド』みたいなダンス振りが上手い方なので夏の歌をメドレーで見せるナンバーにはピッタリでした。
“Gradiators Sanctuary〜ローマの白百合”(羽山紀代美/振付)
 明日海さんと女役に扮した柚香さんが絡むドラマティックな場面。
“NYC〜ニューヨークのカーネーション”(三井聡/振付)
 野口氏はこの景のジョージ・ガーシュインの音楽を使ったレヴュー・スタイルの演出が上手いですね。
 パープル系の幕前で、スタイリッシュな衣裳の仙名彩世さんが男役さんを従えて“S'Wonderful”を歌い踊り、幕が開くとブルーの衣裳の柚香光さんがブルーのドレスの娘役さんを従えて“Summertime”を歌い踊り、さらに幕が開くと大階段が現れ黒燕尾服の明日海りおさんと娘役さんが“Rhapsody in Blue”を。さらに娘役さんと瀬戸さんをはじめとする大勢の男役さんが入れ替わり、明日海さんとの“I Got Rhythm”のプロダクション・ナンバーに。近年宝塚で減少したこの素晴らしい展開にワクワクしました。
“百花繚乱〜花美男子”(Ogri/振付)
 再び幕が閉まり、柚香光さんら11人の若手男役による韓流スターのコンサートみたいなナンバー。スクリーンに映像を写して売り出し方は面白いのに肝心のダンスに魅力が無い。雪組公演で振付にあたった外部の中塚皓平さんが素晴らしい結果を出していた事(コラムVol.1500をご参照)を考えると、今回のシットキングスのOgri氏の起用は今一つだったのかも。
“Eternal Garden〜宝塚”(麻咲梨乃/振付)
 明日海さんをセンターに爽やかな薄いパープル?系の燕尾服を着た男役さんの踊り。明日海さんが歌うこの場面の歌を聴いた明日海さんファンの皆さんは「何だかサヨナラショーの歌みたいね!」と話しているそうです。次のお花を持ったトップ・コンビの素敵なデュエット・ダンスも、確かにさみしさを感じさせる雰囲気があります。
 客席から見る明日海りおさんは相変わらず美しくて魅力的なスターですが、歌劇誌のポートレート等をみると本当に痩せてしまって、そろそろなのかな?とも思わせるのですね。
 野口幸作氏のショー作品にはキラリとしたアイデアも沢山あり、試行錯誤もありで本当に楽しませていただきました!

天野 俊哉



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