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		| Vol.1510 名作『心の旅路』最終回 |  |  |  
		| 実家の父親からのリクエストで往年の名女優グリア・ガースンと名優ロナルド・コールマン主演の名作『心の旅路』のDVDを探す旅に出たわたし。Y'sの貴重なコラムを個人的な場にしてしまいお許しを。 ついに『心の旅路』最終回です。
 「えっ?シリーズだったんですか?」皆さまのぶちギレ寸前のお顔が目に浮かびます。
 
 つい最近、大森西友の3階に移転したBook Off大森店にありました!『心の旅路』が。しかも税込み¥250。値札が美しいグリア・ガースンのお顔を隠してしまって可哀想。
 もしかしたら、この先『心の旅路』の原作本を読んだり、映画を観たりする方がいるかも知れないのでネタバレせぬように書いてゆかないとね。
 
 私が最初にこの作品を観たのがテレビの深夜劇場で、時間は70分位にカットされたものでした。オリジナルが126分ですので今回幻の56分と出会えました。今とちがい当時のテレビ映画劇場は日本語の吹替えとカット版が当たり前でした。例えば90分の映画枠ではコマーシャルが20分ですので映画本編は長くても70分でした。それでも話の辻褄は合うのでカット版に不満はありませんでした。例外がミュージカル映画で、山のように歌や踊りの場面がカットされてました。
 
 で、『心の旅路』ですが映画のテロップで初めて原作が『チップス先生さようなら』のジェームズ・ヒルトンである事、グリア・ガースンの役がダンサーである事を知りました。どこからどう見ても《グリア・ガースンの映画》のイメージでしかなかったのですが、ダンサーの役ならジンジャー・ロジャースの方が適任だったでしょうから、キャスティングが難航したはずです。しかもロナルド・コールマンとジンジャー・ロジャースは1941年のRKO映画『ラッキー・パートナー』ですでに共演済みで相性は良かった、と記憶しています。
 
 ダンサー役のグリア・ガースンが歌って踊るアーネスト・マットレー振付の長いショー・ナンバーがあるのですが、スコットランド民謡の衣裳でバグパイプや杖を持つダンス。何処かで観たな?と思いきや、ジンジャー・ロジャースとフレッド・アステアが『ブロードウェイのバークレー夫妻』で同じ衣裳、同じ様に杖を持って、同じ様にベロを響かせるような歌い方をしたナンバーがあったのです。
 ここでのガースンさんは短いチェックのミニスカートをはいて、美しい脚線美で中々の熱演、多分10歳以上は若いMGMダンシング・チームの女子を従えて堂々のダンサー役をこなしていました。
 
 映画化に際し、ジェームス・ヒルトンの原作とは構成を変えたことで全くの別物になってしまったそうですが、当時のハリウッド映画にはロマンティックな出会いから始まらなければならないしきたりがあり、さらに主人公はロナルド・コールマンでありつつも、MGMのトップ女優であるグリア・ガースンを目立たせなければならなかった。
 ただ、ガースンさんにウエイトを置いた事で映画史上最も美しい感動的なラスト・シーンのひとつが残されたのですから皮肉ですね。
 『心の旅路』の完全版を観て、《記憶喪失》を同じ様に扱った韓流メロドラマの名作『冬のソナタ』を思い出しました。
 また収穫だったのが、ロナルド・コールマンに憧れる若い女性を演じたスーザン・ピータースで、マーヴィン・ルロイ監督の演出で最高の演技を見せ、この作品でアカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞しました。
 スーザンはMGMがたいへん力を入れていた若手女優ですがプライベートの事故で不幸な最期を迎えてしまいました。
 
 登場人物、もしくは主要キャストがとても少ない『心の旅路』ですが、この映画版をベースにしたミュージカル版が宝塚歌劇で上演された事があります。広い舞台がやたら殺風景だった記憶がありますが、やはりラストシーンが素晴らしくて多くの観客を泣かせていましたね。
 興味のあるかたはぜひ一度ご覧になってみて下さい。
 
 天野 俊哉 
 
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