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Vol.146 「慕情」のヒロイン ジェニファー・ジョーンズ追悼
 1940年代から50年代にかけ「聖処女」「君去りし後」「ジェニーの肖像」「ラブレター」「白昼の決闘」「終着駅」「慕情」などの名作で有名な女優ジェニファー・ジョーンズが90歳で亡くなりました。これらの作品は、いずれも映画史において名高くDVD発売もされていますが、彼女の人生は彼女のどの映画よりもドラマチックでした。
 彼女のスクリーン人生は、若い頃結婚した無名の俳優ロバート・ウォーカーと共に、成功を夢見てハリウッドにやってくるところから始まります。数年の下積みの後、ロバートはMGMと、ジェニファーはセルズニック・プロとそれぞれ契約しました。2人とも作品に恵まれ、1944年の「君去りし後」では仲良く共演もしています。ところが、セルズニック・プロの社長デビット・O・セルズニックがジェニファーに惚れて略奪し、ついにはロバートと別れ、ジェニファーがセルズニックと再婚。ジェニファーが大スターの階段を上っていく一方、元夫ロバートはしだいに酒びたりになっていきます。MGMは根気良くロバートを使いますが、以前のような輝きが無くなってしまい、1950年ヒッチコック監督の「見知らぬ乗客」への出演を最後に失意のまま亡くなりました。
 当時のハリウッドでは、スクリーンの女優はプライベートでも清く、美しくあるべきとされ、夫と子どもを捨てたジェニファーのような行動はタブーとされていました。再婚したセルズニックが映画界の大物であったため、映画出演は続けられたものの、ハリウッドから愛された女優とは言えなかったような気がします。
 私が初めて彼女を観たのは「ザッツ・エンタテイメント」での<MGM撮影所25周年記念パーティー>のニュース映像でした。ほとんどのスター達がスーツやワンピースなど軽装なのに、ジェニファーだけが一人ドレスアップしていて、お高くとまっている印象を受けたのを覚えています。カメラは、彼女の近くに座っていたスペンサー・トレーシー、フランク・シナトラ、リナ・ホーンらのあきれた表情もしっかり捉えていました。
 さて、女優としてのジェニファーを一言で表すならば、「スカーレット・オハラを演じることのできた女優」です。「風と共に去りぬ」の制作があと5年遅かったら、ジェニファー演じる不屈の南部女スカーレットが観られたかもしれません。ジェニファーがデビュー当時に出演した「君去りし後」は170分近い大作ですが、見事な演技力で作品をひっぱり続けます。またグレゴリー・ペックとジョセフ・コットンの2人の男を手玉に取る「白昼の決闘」の悪女役も見事でした。
 ただ、個人的には堂々とした体当たり演技よりも、最盛期を過ぎてから出演した「タワーリング・インフェルノ」(1974)での、犬を連れた未亡人役の抑えた演技がとても好感が持てました。当時75歳のフレッド・アステア(結婚詐欺師役)がジェニファーに近づくのですが、ビル災害で彼女は亡くなり、アステアがひとり残されるシチュエーションが涙を誘いました。そう、あれは良い映画でしたね。ご冥福をお祈りいたします。

天野 俊哉






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