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OUR MASTER : 佐々木 隆子
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Vol.1367 Y's取材班を追って〜映画『HANA-BI』
 北野武監督最新作『アウトレイジ最終章』が、Y's取材班さんの「北野作品5本目の出演」なる情報を得るや無性にそれらの作品を観たくなりました。
 かつて『HANA-BI』が劇場公開された頃、テアトル新宿まで出かけたものの、凄い混雑で次の次の回までお客さんが並んでいたので、あきらめた事がありましたっけ。それが、もう20年も前の事になるのですね。
 今回は奮発して中古DVDを購入してじっくり鑑賞する企画をたてました。
 中古ですか?
 中古です。
 実は、気のきいた書店やDVD店では『アウトレイジ最終章』公開を記念して過去の北野武監督作品をずらっと並べてあったのですが、どの店でも『HANA-BI』だけは品切れだったのです。
 だから、仕方なく中古なのですね。

 私は何の先入観もなく『HANA-BI』を観て驚きました。
 台詞の少なさ、ハリウッド映画全盛期の様な音楽の使い方、日本映画離れした風景の美しさ、北野監督自身が描いた絵の魅力。
 これはどんなジャンルの映画なのかな?
 主人公が奥さんと二人旅をする場面、花火を打ち上げる場面は、まるでチャップリン映画。写真を撮ろうとして失敗するギャグはキートン映画。お寺の鐘を勝手にならしてしまう音のギャグはジャック・タチ映画。二人で歩く姿は1930年代のフランス映画の雰囲気だったりする。
 また、何か台詞で説明が入るのかな?と思いきや台詞が無くて坦々と物語が進むのです。それらを補うのが、オーケストラによる美しい音楽や北野監督の絵だったりするのです。
 編集を作者である北野監督が担当している事で、かつてないような展開を作り出せました。
 あんまり素敵な場面が多いので、途中で何度も繰り返して観ました。

 さて、そんな《静》の部分に対して《動》の部分で登場するのが、悪い悪い人達であります。北野映画を象徴する暴力場面ですが、意外にも省略化?されていて観客のショックを和らげております。暴力場面が大変少ないので、逆にその怖さが引き立ちます。
 主人公が金を借りるやくざ屋さんのひとりがY's取材班さんであります。まだまだお若くて貫禄はありませんが、すぐにぶちギレそうな怖さを感じさせます。
 特に親分格の方はお出にならず、若衆の方々が次から次へと北野さんに痛めつけられたり、お殺されになったりします。

 Y's取材班さんの出番は3回です。
@やくざ屋さん事務所内
 まずは「貸すわけねえだろ利子も払えねえのによぉ」と、取材班さんの声だけが聞こえます。
 次のショットでは、お仲間の方と刑事役の北野さんを挟んで座られてます。北野をたしなめる台詞のあと、北野さんが吸っていたタバコの火を手にジューッと。
 アツゥ!
 さらに頭を殴られてしまいます。

Aやくざ屋さん事務所内
 お仲間の方と並んで座られてます。画面の外の仲間とバカ笑いしながらの会話が続きます。
 すると、白竜さん扮する《ジャック・ナイフの俊》みたいに寡黙な悪が冗談をぬかした若造の頭を花瓶で叩き割ります。
 一堂ひきつる。
 コワッ!

B北野さんがいる湖畔まで取り立てに
 取材班さんとお仲間の二人が車から下りてゆっくり歩きだすお姿が続きます。
 やがて北野さんがゆっくりやって来て取材班さんの前に立ちます。
 「兄貴がよ、利子が足んねえって言ってんだ」あたりまで喋ったら北野さんの持っていた石をくるんだタオルで広いおでこをカチ割られておしまいになります。
 イタッ!
 タオルが武器になるなんて知りませんでした。
 そのまま少しの間、死体になられた姿で画面に。
 以上が本編でのご活躍。

 特典映像にはBの湖畔の段取りが収録されてます。
 大人しく監督の説明を聞いているY's取材班さん。
 監督、自分の急所にタオルをぶつけてしまう!ここら辺は私達がよく知ってるビートたけしさん。でも取材班さんは真剣な面もちでニコリともしません。
 このショットでは取材班さんの手にはすでに銃が握られている事が分かります。
 そして、順番に顔を殴られ、隣のやくざ屋さんと共にのびてしまう稽古を。背広が汚れないようにマットが敷いてありました。
 私は、こうした撮影風景が大好きであります。
 そして、ラストのバック・タイトルでもう一度Y's取材班さんのお名前を拝んでジ・エンド。

 1997年にタイム・スリップして若き日のY's取材班さんに会う事が出来ました。
 継続は力なり。ますますのご活躍を期待しています。

天野 俊哉



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