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OUR MASTER : 佐々木 隆子
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Vol.132 マイケル・ジャクソン追悼映画「THIS IS IT」を観て
かつて香港のカンフー映画の大スター、ブルース・リーが亡くなったとき、撮影途中だった映画「死亡遊戯」をどのように完成させ公開するのかが話題になりました。ブルース・リーの場合は映画(フィルム)でしたが、今回マイケルが残したのはあくまでもリハーサルの記録映像です。それを亡くなってたった4か月で1本の「劇場用映画」にして公開してしまうのは、何よりも技術の進歩ですね。
映画はダンサーのオーディションから始まって(100名以上のダンサーがマイケル・スタイルで踊るショットが圧巻)、リハーサル風景を経て、ラスト(たぶん亡くなる数日前)スタッフ・キャストが円陣を組んで「良いコンサートにしよう」というマイケルの言葉でしめるという流れが、ドキュメンタリーとして良くまとめられていました。追悼とかセンチメンタルな演出をしていない為、どのシーンも緊張感にあふれてキビキビしています。
50歳でリハーサルに臨むマイケルには、もう余裕などという甘さはなく、厳しいものがひしひしと伝わってきました。マイケルをずっと見続けてきたファンの方は、げっそりと痩せてしまって健康でなさそうな姿がとても痛々しかったと語っていました。
コンサートの選曲はマイケルらしく、ファンの観たい、聴きたいものがずらりそろっていましたが、どの曲も90年代の“HISTORY”ツアーからさらにバージョンアップしていました。
例えば「Smooth Criminal」には、ハリウッド映画「ギルダ」「孤独な場所で」「東京ジョー」など、リタ・ヘイワース、グロリア・グレアム、ハンフリー・ボガートの映像とマイケルを合成した白黒映画が新しく作られ効果的に使われていました。過去のコンサートにおいても「Billie Jean」のようにすでにショート・フィルム以上の効果をステージで出している曲もありましたが、一番気になっていたのが、「Thriller」でした。かつて大掛かりなイリュージョンを使った演出があったものの常に物足りなさが残り、それはマイケル自身も辛かったはずです。21世紀の「Thriller」は、ハリウッドの特殊メイクのアーティストを呼び、ゾンビを増やし、映像によってやっと彼の思い通りのステージ版が完成したようです。
この映画を観て一番嬉しかったのが、マイケルとミュージシャンやスタッフ達のやり取りがたっぷり観られたこと、逆に一番辛かったのが11人の若いダンサー達の笑顔でした。マイケルにあこがれてダンスを始め、やっと同じステージに立てる夢が叶ったのに、幻となってしまったからです。ただ考え方によっては、4か月もの間マイケルと稽古を詰めたことは若い彼らにとってすごい経験になったに違いありません。
劇場はとても混んでいて、昔からのファンも新しいファンも堪能できたと思います。映画の最後には、大きな、そして暖かい拍手が起きました。スーパースターでありながら、とても親しみを感じることのできる人だからこそ、これだけのお客さんが集まったのだなあと思いました。「THIS IS IT」は2週間限定上映のはずが延長され、さらにかつてマイケルが作った「ムーン・ウォーカー」(1988)までもがリバイバル上映されました。

天野 俊哉






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