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OUR MASTER : 佐々木 隆子
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Vol.125 2009秋・私のショービズ・コラム
「昨日、悲別で」との再会
東京の某所に不思議なDVDを販売している店があります。マイケルやマドンナの日本公演ライブや、市販してはいけないとされている「ウルトラセブン第12話」や手塚治虫の「どろろ」etc。それらといっしょに並んで、「昨日、悲別で」のタイトルが目に入りました。
倉本聡氏が脚本を書いた1980年代初めのドラマで、今までビデオにもDVDにもなっていないとのこと。実はこのドラマこそ1980年代タップ・ブームの火付け役となったものなのです。タップ・ダンサーを目指す主人公が働く店が、実際赤坂に店をかまえていたタップを見せるショーパブTAP TIPS。振付をされていた中野章三先生が自分の役で出演。当時、ヒロインの石田えりさんにウエイトを置いて作られたせいか、どっちつかずの作品になってしまい最後まで観なかった記憶があります。
ドラマ終了後、TAP TIPSの店はすごい人気で、当時タップを習いに来ていた(お金持ちの)生徒さんで通い詰めている人もいました。新米インストラクターとして地味に生きていた私は、とてもうらやましい気持ちで眺めていました。その後2〜3年でお店はクローズしてしまい、TAP TIPSで踊っていた若い男の子達は転職された方が多いと聞いています。ある方は私のスタジオに営業セールスマンとしてやってきたり、ある方はアニーの稽古場でスタッフとして働いていたり・・・。
25年ぶりにドラマのDVDを観ながらそんなことを思い出しました。

福山雅治さんがキートンのギャグを !!
1920年代サイレント・コメディの王様だった、バスター・キートンの映画のワンシーンがテレビCMに登場。福山雅治さんのキューピー・マヨネーズのCMがそれです。
福山さんの後ろの建物が前に倒れていくる。しかし窓枠で福山さんの体をすり抜ける、というギャグ。バスター・キートン1928年の傑作「蒸気船」での最大の見せ場です。もちろん福山さんの方はCG処理ですが、80年前キートンは、何トンもある建物を自分めがけて本当に倒したそうです。その瞬間を、スタッフは誰も直視できなかったとか。
今回の福山さんのCMは白黒で良いムードを作っていますが、衣裳はバスター・キートンのそれではなく、アメリカ映画「妹の恋人」のジョニー・デップを参考にしています。ジョニー・デップはこの映画ですっかりキートンに成りきっていて、これはこれで楽しめます。「キートンの蒸気船」(または船長)も「妹の恋人」もDVD化されています。

手には入れたけれど・・・
30年間捜しつづけていた本がやっと手に入った、と聞いて皆様はどう思われますか。1963年に出版された、ハリウッド・スターの弁護士ジェリー・ギースラーの自伝で、上下2巻に分かれています。8月初旬、神保町の映画関係の古本屋で下巻だけを見つけました。¥157と超安値。でも下巻だけです。とても嬉しかったので友人に話すと「ネットで調べてみれば?」の一言。46年も前のこんな地味な本と思いきや、「上下4冊在庫有り」の文字が・・・。上巻を手に入れられるという嬉しさの反面、何となく複雑な気分でした。やはり、本屋さんの本棚に置いてあるのを見つけた時の感動の方が大きかったですね。
さてギースラー氏は、チャールズ・チャップリン、バスビー・バークレー、エロール・フリン、ロバート・ミッチャムなど、ハリウッド映画界の大物を弁護してきたキャリアがあります。ただ、1963年という時代は、彼が弁護してきたスター達の多くがまだ活躍中だったせいか、暴露色が薄められ穏やかな文章になっていました。陪審員達を思いのまま操って、限りなくクロに近い大物達を勝利に導くギースラーの敏腕ぶり(一部の説では悪徳ぶり)は、ケネス・アンガー氏の書いた有名な「ハリウッド・バビロン」に一歩譲ります。興味のある方はどちらの書もネットでどうぞ。

ザ・タイガース ⇒ ザ・ピーナッツ
今年の夏の私にとっての最大のイベントは、「ザ・タイガース」のコンサートDVDを観ることでした。CDにはなっていたものの、幻となっていたコンサート映像の初めてのDVD化ということで、8月7日いそいそとショップへ。ところが店員さんに尋ねると「発売中止になりました」のひとこと。著作権のせいなのか何が悪いのか納得できず店を立ち去りかねていたそんな時、私の目に飛び込んできたのが「P-Legend」なる文字。こちらはザ・ピーナッツのコンサートDVDです。たまたま値段が近かったこと、2つのグループがどちらも渡辺プロダクションだったこと、ジュリーとザ・ピーナッツのどちらかが夫婦だったことがピピピと反応して買ってしまいました。バカみたいでしょ。
ザ・ピーナッツは子どもの頃良くテレビで歌っていた双子の歌手でしたが、私の中では「モスラ」に出てくるインファント島の小美人であって、特に思い入れはありません。DVD1枚目は「シャボン玉ホリデー」を含むテレビ番組からのダイジェストですが、「恋のバカンス」以外、パンチのある曲が少なく単調です。ただMTV以前の歌番組の作り方がユニークで、それでいて親しみを感じます。DVD2枚目は2人のラスト・コンサートの映像でした。同じ渡辺プロの伊東ゆかりさんや中尾ミエさんがザ・ピーナッツを盛り上げるために出演していますが、彼女達が出てくると主役であるはずのザ・ピーナッツの2人がさりげなく引き立て役にまわってしまうような空気を感じました。ソロとして活躍している女性歌手の方が華があるのはわかりますが、もしかしたらザ・ピーナッツのお2人は、本当は芸能界に向いていなかったのではと、考えさせられてしまいました。

マイケル・ジャクソン追悼その後
このコラムに追悼文を載せてはや2ヶ月経つのに、MJブームは根強いです。写真をメインにした追悼本が多く出版され、CDもジャクソン5時代のものからほとんどが再発売されました。
今年の夏のDVD売り上げでは、オリコン・チャートのベスト10にMJのものが多く含まれていました。「崖の上のポニョ」に次いで第2位を記録したMJの「ライブ・イン・ブカレスト」では、次から次へと女性が失神していく映像がMJのスーパースターぶりを印象付けています。1980年代後半の<BAD TOUR>がハンドマイクを使っての昔ながらのコンサート・スタイルであったのに、たった4年後<DANGEROUS TOUR>の「ライブ・イン・ブカレスト」は、現在2009年に観ても舞台装置・照明などびっくりする位進歩的でマジックでもあります。
メーカー発売の正式ルート以外に、マニア向けのブートレック盤と呼ばれる商品ルートでは、MJの死で中止になった公演のリハーサル追悼公演まで、ほぼ何でも揃っています。さらにインターネットでは「MJ DVD 32枚組完全盤」なる商品まで売られております。奥が深いですね。
他殺説も浮上していますが、「実は生きていた !!」なんてサプライズでもあったら嬉しいのに。

天野 俊哉






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