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Vol.1204 生誕100年ルシル・ブレマー〜MGMミュージカルの踊る女神(前編)
 たった4本のMGMミュージカルにしか出演しなかったのに、フレッド・アステアと踊った事で、今日までしっかりと名前が記憶されているのが1917年2月生まれのルシル・ブレマーです。

 私とルシルの出会いは悲惨なものでした。
 あれは14歳の夏の事。
 ジュディ・ガーランド主演のMGMミュージカル「若草の頃」がテレビで放送される事になったのです。
 映画雑誌で情報を得てから何日も何日も楽しみにしてました。
 MGMのライオンが三度吼え映画が始まりました。ルシルはジュディのお姉さん役を明るく演じていました。
 やがてTHE ENDが出て映画が終わりました。
 しかし、私は立ち上がれなかったのです。
 感動して?
 いいえ、ショックで!
 出てこなかったのですよ。
 あのジュディが歌う素晴らしいミュージカル・ナンバーである“The Boy Next Door”“The Trolley Song”の2曲が。もう見事にカットされていたのです。
 せっかく良い作品だったのに、イチゴの入っていないショートケーキを食べさせられた様な気分でした。
 当時、テレビの映画放送は放送時間内に収める為に物凄い、信じられない様なカットが普通でした。
 それ以来、私は「若草の頃」のビデオを買っても観ず、DVDを買っても観ずで来ました。今回、ルシル・ブレマーのコラムを書くために何十年ぶりかにこの作品を、メイキングを含めて観ました。
 改めて感動して観ました!
 この年齢になると別の意味で楽しめるものですね。

 で、ルシル・ブレマーでしたね。すっかり君の事を忘れていたよ!
 ルシルは舞台のダンサーとして踊っているところをMGMのプロデューサー、アーサー・フリードにスカウトされました。そしてジュディ・ガーランド主演の大作「若草の頃」で映画デビュー。
 美しい女性ではあったけれど、残念ながらスクリーンで輝く何かが欠けていました。「若草の頃」には演技に優れた俳優が沢山出ていたので、出番も台詞も多いのに全く存在感がありませんでした。
 MGMが誇るミュージカル・スターをズラリ並べた「ジーグフェルド・フォリーズ」では、フレッド・アステアと2つのダンスナンバーで共演しました。
 ルシルの美貌に相応しい白いドレスを着た令嬢役での“This Heart of Mine”は、詐欺師役のアステアに騙されつつも真実の愛をつかむ感動篇。
 チャイナタウンを舞台にした“Limehouse Blues”では、黄色いセレブなチャイナ服に身を包み、平凡な中国男性役のアステアを翻弄する悪女役を。ダンスは流れ弾に当たり生死をさ迷うアステアの夢の中で繰り広げられました。
 この場面でのルシル・ブレマーが、彼女の真の魅力が実は踊りではなかった事を証明しています。
 つづく。

写真 上2枚
・ルシル・ブレマーのミュージカル映画DVD。手前の小さなケースのDVDは白川希さんからのプレゼントで彼のお手製
・1980年にアメリカで初めて発売された「若草の頃」のビデオ(未開封)。当時日本で¥29000位の贅沢品

天野 俊哉




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