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OUR MASTER : 佐々木 隆子
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Vol.1181 戦前の映画雑誌を買いました
 映画ファンになって何十年も経つのに、いまだに手を出さなかったのが、戦前の映画雑誌です。
 値段が高いのと、ビニールに入っていて中身が見れないからでした。かつては¥5000から¥8000何てバカみたいな値段がついてました。ただ、戦火をくぐって生き残った訳ですから仕方無い。
 学生時代、銀座にフィルム・ライブラリー協議会なる小さな事務所があり、古いキネマ旬報誌が閲覧出来ました。タップ・ダンスの女王と呼ばれたMGMミュージカルのエレノア・パウエルのスクラップブックを作ろう!と何日も通い戦前の映画雑誌を調べました。
 その事務所には清水さんという年輩の男性がいつもいました。私は普通に会話をしていましたが、洋画の世界では凄い方だと、後で聞かされ驚いたものです。

 さて、かつては¥5000もした映画雑誌も、近年では大分値崩れして¥2000位に。
 先日、神保町の映画関連の老舗矢口書店に寄ったら、外の箱に状態の悪い戦前のキネマ旬報誌が¥500で売られていました。
 ボロボロのものもあるのでタダでも良いくらいですが、そこは素直に選別して、1936年から1939年発売されたもの4冊を購入いたしました。
 この4年間で気になったのが、
 @紙質が段々落ちてくる
 Aアメリカ映画が減少
 Bウファの映画が増加
 C記録映画やアメリカ映画再上映の増加

等、娯楽が戦時に支配されて行く背景でした。
 国交が危なくなっていたアメリカ、イギリス、フランス映画の輸入を規制し、逆に同盟国のドイツ、イタリア映画の輸入を増やす。それでも作品の不足を記録映画やアメリカ映画の再上映(リバイバル)で補う。
 しかし興業成績を見ればアメリカ映画が断トツ。当時の日本人は、この状況をどう見ていたのでしょうね。
 すでに中国とは交戦状態にあり、すでに駆り出されていた日本映画界の巨匠小津安二郎監督からの「續(ぞく)手紙」なるコラムがあり、その書き出し「無事である」にはゾッとしました。

 戦時である事を除けば1930年代は、ハリウッド映画の黄金時代。
 シャーリー・テムプル
 クラーク・ゲイブル
 フレッド・アステーア
 ジンジャー・ロヂャース
といった名前の露出が多い。
 ゲイブルの映画は常に興業成績が良いとか、成長したテムプルちゃんはもうダメだろう、とか本音炸裂。
 アステーア&ロヂャースと言えば、このコンビには“Swing Time”(1936)という作品があるのですが、当初RKO日本支社は「気儘(きまま)時代」という日本版タイトルをつけ広告にも出しました。本を広げのんびりしたアステーアの姿はまさに気儘なのですが、さすがに大ヒットを狙うには弱い!と考え直した結果「有頂天時代」というドッシリしたタイトルに変更した様です。
 知りませんでしたねこれ。
 ところが、今度は“Carefree”(1938)という同じアステーア&ロヂャース作品が輸入された時、ボツになった筈の「気儘時代」が、復活して新作の日本版タイトルになってしまいました。

 私はここ数日、これらキネマ旬報誌を持ち歩いて読んでいるのですが、さらにボロボロになってしまいました。

天野 俊哉




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